(本書の内容、結末を明かしています。) 江戸川乱歩の初の連載長篇が本書『闇に蠢く』である。 雑誌『苦楽』に1926年1月から11月にかけて連載されたのだが、前年に「人間椅子」が掲載されて大評判となり、それを受けて、新たに長編依頼があったらしい[i]。ところが、本作は完結したわけではなく、途中行き詰って、というより、最初から行き詰って(?!)、休載を重ねた末に中絶してしまった[ii]。こんなことをいまだに蒸し返されては、天国の乱歩も苦虫をかみつぶしていることだろうが、彼の「長篇は駄目よ」状態は、実に処女長編小説のときから始まっていたことになる。 長編が苦手で、短編が得意という作家はいるようで、O…