(本書の内容等を、詳しく紹介しています。) 『黄金仮面』は、雑誌『キング』に1930年から翌年にかけて連載された、江戸川乱歩最大のヒット作のひとつである。大内茂男によっても「大衆小説界に乱歩の人気を不動のものたらしめた快作」[i]と評価されている。そもそも『キング』というのが百万部売ったこともある全国津々浦々まで知れ渡った国民的雑誌だったそうだ[ii]。 乱歩も、同じ講談社の『講談倶楽部』連載作以上に、気を使って構想を練った模様で、「私の癖のいやらしい感じは、なるべく出さないように力(つと)めた」[iii]という発言が残っている。確かに、『蜘蛛男』(1929-30年)や『魔術師』(1930-3…