渡辺浩氏の『日本政治思想史 17世紀~19世紀』(東京大学出版会、2010年)を読んだ。江戸時代初期から明治時代初期の政治思想を、儒学なかでも宋学(朱子学)の受容と変遷を中心に読み解いた作品だ。 異文化での儒学の受容を中心に語られる『日本政治思想史』 まず、江戸時代における学問(書物)の受容がどのようなものだったのか、渡辺氏の基本的な見解を確認しておく。 「徳川初期には、武士が書物に親しむこと自体、奇異だった。ましてそれが漢字だけで書かれた儒学書であれば、僧侶がお経を誦む姿にも似る。周囲は往々『武士のくせに』と、あざけったようである。ところが、儒学を学ぶ武士という、戦国風の常識からすれば奇異な…