司馬さんの、「経験から紡ぎ出す、多くの人が共感できるような心象風景」と、「歴史の重要な1シーンに恰も自身が居合わせたような表現・描写」にも私は惹かれる。 この本にもそう言う作品が多いが、多分にそれらを感じたのが標記の2作品である。 『一杯のコーヒー』には、少年から大人(学生)へと移る風景が「一杯のコーヒー」に寄せる形で描かれていた。 「少年客気」。少年の頃、誰しも多かれ少なかれ「人生に何がしかをやってやろう」と心密かに思っているのではないか。 その心のまま突っ走っていったのが幕末の志士たちであろう。 少なくとも、私もご多分に漏れず、そうであったし、その少年期だけでなく青年期もそうだと思うが、「…