池央耿『翻訳万華鏡』河出文庫を読了。 ハモンド・イネスの諸作、J・P・ホーガンの『星を継ぐもの』などなど、多くの冒険小説、SF、ミステリーでお世話になった翻訳家・池央耿による著書。てっきり、翻訳業界の裏話や苦労話が読めるものと期待して手を出したのだけれど、残念ながらそういう内容の本ではなかった。冒頭こそ、翻訳家となったいきさつなどが語られ、僕の大好きなネヴィル・シュートの名前が頻繁に出てくることもあって喜んで読んでいたが、だんだん自分が翻訳を手がけた作品や著者に関する「解説」が主な内容となり、最後には翻訳や言語に関する文化論とでもよぶべき内容となり、もっと柔らかい内容の本を期待していた当方の許…