◆「感情史」という語に惹かれて、本屋さんで後藤里菜著『沈黙の中世史』(ちくま新書)を手に取ってみました。目次を眺めると、最後の方でヒルデガルトが取り上げられていて、思わずうなずいてしまいました。ただ、帯のことばには少々とまどいました。『「暗黒の時代」ではない。』と書かれていたからです。 ◆このことば(編集者が考えたのでしょう)には、歴史の見方の変化が反映されていないように感じました。40年ぐらい前までの新刊書であれば、『中世ヨーロッパは「暗黒の時代」ではない』というキャッチフレーズは、インパクトを持ったでしょうが……。 ◆たとえばハスキンズは、有名な『十二世紀のルネサンス』で次のように述べてい…