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河野六郎

(読書)
こうのろくろう

河野六郎(こうのろくろう)は日本の言語学者。神戸生まれ。1912年〜1998年。
東京帝国大学文学部言語学科卒業。小倉進平に教わり、また氏の朝鮮語研究を大きく発展させた。
主な研究領域は、朝鮮語学、中国音韻論学、文字論、類型論など。
京城帝国大学、東京文理科大学、東京教育大学などで教鞭を執り、同大学名誉教授。
文字論』は言語学のこの分野でとりわけ重要な著作の一つ。
簡潔な紹介が千野栄一の『言語学 私のラブストーリー』に収められている。

日本の言語学者はごく大雑把にみて二つのグループに分けられる。
 その一つは言語学が成立したヨーロッパの言語学(それに直接的でないにせよ続くアメリカの言語学)に通じている研究者で、概して印欧語を対象とする研究者、もう一方は日本語を含む日本を囲む諸言語(とりわけその記述)を対象とする研究者である。
【日本を代表する言語学者】前者を代表する言語学者が高津春繁博士で、言語学への理解の深さのレベルといい、研究された古代ギリシャ語方言研究といい、日本を代表する世界的な学者である。第二のグループの代表は服部四郎博士で、モンゴル語、アイヌ語、日本語などの記述研究は成果をあげ、そこから数多くの弟子たちが輩出している。
 この二分法の両方にまたがっていて、そのどちらにも数多くの業績がある唯一の言語学者、日本を代表する言語学者がここで取り上げられる河野六郎博士である。生前の高津博士が、「ギリシャ・ラテン・サンスクリットをちゃんと修めた河野君以外の人がアジアの言語のことをいっても、どうも信じられない」と、時にふれてもらしておられるのを耳にしたことが何度もある。
 河野博士は一九一二年(大正元年)、神戸で生まれ、すぐ東京に移り、府立一中、一高、東京帝国大学文学部言語学科と卒業された。卒業後教鞭をとられたのは京城帝国大学、天理大学、文理科大学、東京教育大学で、ここで四分の一世紀にわたって弟子を育てられ、退官後大東文化大学にも勤められている。(中略)
 河野博士は大学のほか、財団法人東洋文庫や、東京外国語大学のアジア・アフリカ言語文化研究所、東洋文庫附置ユネスコ東アジア文化研究センターなどで、要職をこなされ、日本学士員会員、文化功労者に選ばれ、紫綬褒章を得ておられる。
 鋭い研究者であると同時に、実にやさしいお人柄で、文字通り学者の見本ともいえる方であった。
 論文・研究では明快、簡潔さを愛され、言語研究の本質は思弁的ではなく、具体的でなければならず、「言語学は形式を研究する学問、表層構造を研究する学問である」と主張し、「言語のことを分ろうと思ったら、言語学の入門書を読むより、一つの言語を学んだほうがいい」といわれ、ご自身でもそれを実行されていた。
 世界に誇り得る日本の言語学者である。
 一九九八年没、享年八十五。
「文字論の巨匠 河野六郎」千野栄一 月刊言語2001年2月別冊・特集:言語の20世紀101人(株式会社大修館書店

http://www.toyama-cmt.ac.jp/~kanagawa/gogaku.htmlhttp://www.toyama-cmt.ac.jp/~kanagawa/より)
(前略)
研究の対象とする言語が多かったのは河野六郎先生【学士院会員で文化功労者・故人】で、朝鮮語の権威なのだが、中国語はもちろん、古代エジプト語など数多くの言語の大家で『言語学大辞典』(三省堂)という全七巻の辞書の編集をされた。全三巻の『著作集』(平凡社)もある。文字論に関しては世界的な権威である。
 先生には満州文語やエスキモー語の初歩を教わった。年を取られてからもアフリカの言語を順番に勉強しておられた。フランスの哲学者の本の翻訳もされている。
 言語学概論は僕は聞かなかったのだが、後に辻星児【岡山大教授】さんから講義ノートを読ませてもらった。
 先生のお兄さんの河野與一さん【哲学者・故人】は更に多くの言語を対象とされていて、岩波文庫の翻訳は全て與一さんの息がかかっているといわれる。
 遺伝子ってすごいと思う。
 先生は五代目古今亭志ん生によく似た風貌であった。東洋文庫でお会いしたのが最後だった。
 紫綬褒章受賞や文化功労者になられた時に弟子たちがお祝いをと何度も持ちかけたのだが、固辞された。自慢することが一つもない、と自慢するしかない僕らとは雲泥の差がある。
 僕は初めての講義でこの碩学に名前を聞かれて「欣二の“欣”はよろこびの意味の“欣”ですが、分かりますか?」といってしまった!(後略)

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