『鹿洲公案』とは、特に台湾の統治に力を発揮した、清朝の実務派官僚の代表格である藍鼎元(1680-1733)が、自分が任地で体験した統治・裁判の事例を記録した本です。 そしてこれを翻訳したのが宮崎市定で、平凡社東洋文庫に『鹿洲公案―清朝地方裁判官の記録』として収められています。しかしこの翻訳は、一風変わったものです。本書の凡例を見てみましょう。 一、この翻訳は、いわゆる学術的な翻訳ではない。という意味はむつかしい原語をそのまま訳文の中に残しておいて、注でそれを説明するというような方法をとらないということである。だからこの訳文を学術的な論文などに引用する場合には、原書はいくらでもある本だから、一度…