前報では,〈大三〉が手に入れようとした「透き通ったばらの実」の正体が,「自分」を「さいはひ」にさせる手段としての「科学の力」であることを明らかにした。本編では,「葦」などの植物が物語に登場する意味を解明することによって,この童話に教師時代の賢治の恋物語が挿入されていることを明らかにする。 4.物語に挿入された教師時代の賢治の恋 1)授業や実習の様子 童話『よく利く薬とえらい薬』では,肥満の〈大三〉は鳥達から「人だらうか象だらうか」,「ふいごだらうか」,「大きな皮の袋だらうか」,「びくっくり,くりくり,」,挙げ句の果てには「何しに来た」とまで言われている。なぜ鳥達は〈大三〉を「ふいご」と呼ぶので…