高2の夏休みにこの本を読まなければわたしは作家にならなかった。なるほどそうか。そういうことかとこころの中で膝を打つ代わりにページの角を折る。折りすぎて折る意味がないくらい折った。おかげでその夏わたしは自殺をせずに済んだ。過越の祭。読書によって/においてわたしのその決断は先延ばしにされた。以来、本はわたしの種なしパン(マッツァ、トルティーヤ、ロティ)になった。本を食べ、言葉で息をすることで生きてきた。わたしにひとつの使命が課せられた。 すべての自殺者の尊厳を守れ。自由を敬え。畏れよ。安易な言葉で否定も肯定もするな。言葉の力能、権能、その限りにおいて想像せよ。 もしぼくが樹々にかこまれた1本の樹で…