田中小実昌「エッセイ・コレクションⅠひと」(筑摩書房)の中の、「神秘と宗教はちがう」というエッセイが面白かった。田中小実昌については、酒飲みのタコ八郎に似たおじさん、というくらいの印象しかなかったが、小島信夫や後藤明生と親しかったというので、どこかのタイミングで読みたいと思っていた。 エッセイの中身を紹介すると、作家仲間で「野良犬の会」というのをやっていて、団長が今東光、副団長が柴田錬三郎、幹事が梶山季之だったのだが、あるとき四谷三丁目の軍鶏(しゃも)屋でみんなでわいわい飲んでいるところで、当時たいへんに有名だったスプーン曲げの少年がきて、別室でパフォーマンスをやるという話になった。 〈有名な…