・渚通り(立原正秋著 1998年 メディア総合研究所) 文学作品には作者自身の生き様や、こうありたいという理想、価値観、自身が問題と捉えていることとそれに対する考え、などが前面に出てくるのだろうか。私小説ならそれが比較的わかりやすく出てくるのだろうし、純文学にすると少し遠回りした表現になるのではないだろうか。 立原正秋の短編集を図書館で手に取った時、「渚通り」という彼の小説によくありそうな散文的なのに印象を残す書の題名に魅かれた。 勁直(強く正しい事)。矜持(誇り)。そんな断定的で強く美しい日本語を知ったのは立原正秋の書だった。彼の作品は「己に対して矜持を持ち、勁直に生きる男」が主人公になるこ…