笑いと恐怖の境界線は、思いのほか曖昧なのではないだろうか。そんな思い付きを裏付けるかのように、よくよく考えてみれば不思議で恐怖を伴う光景であるはずなのに、思わず笑みがこぼれてしまう、なんて状況はそう珍しいことではない。 もしかするとそれは、受け止めきれない恐怖を前にして感覚が麻痺してしまった結果なのかも知れない。あるいはそもそも、恐怖を引き起こす状況なんてものは、個別の事象として切り取ってしまえば、意外とユーモラスな状況なのかも知れない。 瀬川ことび氏による『お葬式』は、そんな恐怖とも笑いとも付かない状況を見事に描き出した短編集だ。何気ない日常に潜む、不可思議で、ともすればユーモラスな出来事の…