別に離婚の調停をしているわけでもない。もめごとがあったわけでもない。重たい雰囲気のその建物は実に約四十年振りだった。白い建物と思っていたが記憶違いだったのか。薄茶色だった。建物を出て海を間近にする公園まで歩いた事を覚えている。 玄関の扉を開けるとそこは空港ゲートのようだった。ガードマンが数人。手荷物はX線透視装置を通す。自分自身もセキュリティゲートをくぐらないと入れない。この建物には刃物でも持ち込む輩が居るのだろうか。そんな事態を恐れているのかもしれない。 四十年以上も昔に何の罪でここに来たのだろう。罪状名は憶えていないが何をしたのかは覚えている。まだ十八歳だった。親元を離れて一人住まいを始め…