大昔、片思いをしていたときのことを思い出した。それは恋愛というよりは執着で、そしてもしかするとたしかに、収集心でもあったかもしれない。毎日その相手にあうたびにあったどんな小さな出来事さえも大事に胸にしまって家に帰り、日記に書き留めては見返していた。そう、あれはたしかにコレクションだった。 この小説を読みながらそんなことが腑に落ちた。 もしあらすじだけをかいつまんで説明したとしたらこの主人公の男のしたことは狂気だし、もし同じ世界に住んでいる人物だったのなら軽蔑と嫌悪のミルフィーユを投げつけたい気持ちになってあきれはてていただろうなと思う。だけど住む国も時代も性別も信じる宗教も違うわたしが、感情移…