落語には、お寺の噺がありまして、上方でしたら、たいがい、ずくねん寺、てな怪しげな名前のお寺が『八五郎坊主』や『ちょうずまわし』なんかに出てまいりますが、とにかく、落語に出てまいりますお寺に、立派な寺院はございません。 けれども、そうは申しましても、古典落語のいくつかは、仏教のたとえ話が下敷きになっておりますし、また、落語家自身が、仏教の教えに目を開かれることもあるようでございます。 たとえば、初代三遊亭圓朝師は、 「舌ではなく、心で語る」 という仏教の教えを、山岡鉄舟から教わったそうです。 古谷三敏さんの漫画『寄席芸人伝』にございます、戦後、日本語のわからない進駐軍のアメリカ人に落語を聞かせる…