十人十色という言葉があるように、人間の個性とは実に多様である。それは、文章においてもまた然り。
「後ろで大きな爆発音がした。俺は驚いて振り返った。」
「後ろでシュワルツシルト・アルフィエーリの文章を思わせるような繊細な爆発がした。ステンレス・スティールの上にあるライト・スタンドとペーパー・クリップをクローゼットにしまいガソリンの味がするコーヒーを飲み干し後ろを振り返った。やれやれ、と僕は思った。」
「後ろで爆発音がした、汚い猫が逃げる、乞食の老婆が嘔吐して吐瀉物が足にかかる、俺はその中のトマトを思い切り踏み潰し、振り返った。」
「(爆発−−)
であった。
余談だが、日本に初めて兵器としての火薬がもたらされたのは元寇の頃である…」