東京に出てきて初めて借りた部屋は、家賃3万円の風呂なし6畳一間だった。 この春大学を卒業した僕だったが、晴れて就職する予定だった地元の企業がなんと卒業間際で倒産する事態に直面した。早い話が就職浪人となってしまったのだ。さすがに慌てた僕は、地元より東京の方が就職には有利だろうと判断して急遽上京したというわけだ。時間も予算も少ない僕に不動産屋が案内したのは、見るからに古い木造アパートだった。僕は、そのアパートを前に茫然としたが、もう後戻りは出来ないと自分に言い聞かせた。 築50年を超える木造アパートというのは、いざ住んでみると驚く事ばかりだ。音が響くというレベルじゃない。僕の部屋は2階になるが、横…