一匹の猫を中心に、猫を溺愛している愚昧な男、猫に嫉妬し、追い出そうとする女、男への未練から猫を引取って男の心をつなぎとめようとする女の、三者三様の痴態を描く。人間の心に宿る“隷属”への希求を反時代的なヴィジョンとして語り続けた著者が、この作品では、その“隷属”が拒否され、人間が猫のために破滅してゆく姿をのびのびと捉え、ほとんど諷刺画に仕立て上げている。 猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫) 作者:潤一郎, 谷崎 新潮社 Amazon なんてことないお話。荒物屋の夫婦がいて夫は猫を可愛がり過ぎていて妻はそれが気に入らない。一方、夫の別れた元妻は猫をこっちに寄越せという。夫は猫が可愛くて手放したく…