第三章 娘の消息を尋ねて(続き) そして、もう一人の背広姿の男が話し始めた。 「お初に目にかかります。私は大河内多聞と言って、実は土佐出身です。津田の仲間に、新選組と争った長州と土佐の出身者がいたとは杉村さまも驚かれたことかと思われます。でも、これも何かのご縁でしょう」 「そうか君は土佐者か。……土佐者ともよく剣を交えたな」 新八はそういったあと、一息入れて突然思い出したように幕末のある事件の話に切り替えた。 「でも断っておくが、坂本龍馬を斬ったのは新選組ではないぞ。これだけは断っておく。坂本は最後に幕府の力を認めておった。だから、公武合体を言い始めたのだ。新選組もばかではない、ちゃんと時局を…