はしご酒(4軒目) その九十七 「テロワール!」③ プチプチとした生タイプの濁りが、真っ黒な楽茶碗に注がれる。その様子を見て、「マッコリのソーダ割りみたいだな」、とAくん。 それもこれも女将さんの意図するものなのか、その色味と楽茶碗とのコラボレーションは、たしかに、マッコリのソーダ割りに、見えなくもない。 わざわざ、抹茶をいただくような作法で、ソレを美味しそうに口に含んだAくんは、指でソッと、その縁に付いた真っ赤な口紅を拭う。 口紅、付いてないし、そもそも、そんなもの、塗ってもいないし、などと、突っ込んでみたくもなったのだけれど、その仕草があまりにも完璧で、一瞬、不覚にも見惚れてしまう。 「抹…