怨の恋:篠原嶺葉 1908年(明41)大学館(うらみのこひ) 篠原嶺葉(しのはら・れいよう)は硯友社の門人として知られるが、なぜか生没年を含め、その人物像が語られることが皆無に近い作家の一人である。明治後期から大正時代にかけて、家庭小説と称された作品が多数刊行されたことを見ても、当時は人気作家だったと思われる。 この小説の「はしがき」にあるように、「富豪の家に生まれ、春秋に富み、健康人に勝れ、容貌衆に肥えたる」という跡取り息子が突然自殺するという事件から物語は始まる。海外留学を終え、華族の美しい令嬢との結婚を目前としていた。その死の謎を解くには、時間を遡る必要があった。富豪の当主の懇願に応じて…