2.「宗教情操」と「恋愛から宗教情操への漸移」は正しく「宗教情操から恋愛への漸移」は正しくないとしている根拠はあるのか 賢治が「宗教情操」は正しく,「宗教情操から恋愛への漸移」を正しくないとしているのは「法華経」の教えによるところが大きいと思われる。「法華経」の梵語(サンスクリット)の原題は『サッダルマ・プンダリーカ・スートラ』である。直訳は「正しい・法・白蓮・経」で,意味は「正しい教えの白蓮」である(坂本・岩本,1994)。「法華経」の「方便品第二」では「如来がこの世に登場したのは煩悩に縛られている衆生を救うためである」と説かれている。また,「法華経」の「安楽行品第十四」には法華経の修行者は…