「もしもしカヲルくん?今いったいどこに…」 「課長…いま…海にいます」 出勤しようと駅のホームに立ち、気がつくと会社に向かう電車ではない車両に乗っていた。 車窓からいつもと違う風景をボンヤリと眺めながら、なんとなく 「海に行きたいな…」 なんて。 着いたのは小海という駅。綺麗な名前だ。 「海?海って」 「いま、小海です…」 「小海?佐久の小海町のことかね?海どころか、えらい山の中じゃないか」 「有休を使わせていただきます…」 「有休って、キミ、もう有給使い切って…ツーリングだかなんだかで」 「傷病休暇でお願いします…深爪で…」 「ちょ、カヲルく」 ピッ。 ツーツーツー 日々の喧騒からのエスケー…