今月の最後、当代の大看板が二人揃った大一座、二部の感想を綴りたい。 前の記事でも書いたが、一部・三部に比べて突出した手応えのある狂言が並んだ第二部。全ての部がこんなだったら、それはもう大変な事になるが、ともあれ非常にこの二部は充実していた。まず幕開きは「熊谷陣屋」。松嶋屋の熊谷、錦之助の義経、孝太郎の相模、坂東亀蔵の軍次、門之助の藤の方、松之助の景高、歌六の弥陀六と云う配役。藤の方と軍次以外は、昨年師走の南座の顔見世をそのまま持ってきた座組。 歌舞伎座で松嶋屋が熊谷を演じるのは十六年ぶりの様だ。正に幕切れの科白ではないが、「十六年は一昔」の感。その間に高麗屋と播磨屋はそれぞれ四回ずつ演じている…