記憶に残る映画を記憶のまま、曖昧に書く。 市川右太衛門の映画主演三百本目の記念。 東映オールスターの大娯樂剣戟映画で、片岡千恵藏、大友柳太朗、月形龍之介、大河内傳次郎から、若い萬屋錦之介(当時は中村錦之助だつた)、大川橋蔵、東千代之介、里見浩太朗、北大路欣也と、時代劇に興味を持たない讀者諸嬢諸氏も、きつと御存知の名前がずらずら並んでゐるでせう。 筋立てなんぞ、気にせずともよろしい。一応は仙台伊達六十一万石の世嗣相續を巡る陰謀が主軸。忠義一徹の派閥が世嗣ぎを護らうとする中、退屈男が颯爽とあらはれれば、もう心配は要らない。御膳立ては万全。惡事は潰へ、伊達の御家は安泰、まさに萬々歳である。 何しろ安…