大型書店の作家論コーナーに行くと、夏目漱石関連本の多さに毎度驚く。 それほどまでに漱石は愛されている。 何を隠そう私もそのひとり。 どのくらい好きかというと、新潮文庫で集めていたのに、注釈などが充実している岩波文庫に買い換えるぐらいだ。 なかでもいちばん好きなのは『行人』。 漱石作品の中ではわりとマイナーである。 だからといって通ぶりたいわけでもないし、なんなら最も優れているのは『こころ』だとも思っている。 ではなぜ『行人』なのか…は別の機会に。 この『直筆の漱石』は作者によって収集された、漱石の反古原稿(その裏の落書き)や友人知人に贈ったサイン入りの献本などから、漱石研究に新たな光を当ててい…