作家・半藤一利氏が亡くなった。私はNHKの歴史ドキュメンタリー番組の監修者として必ずや名前の挙がる氏の歴史観に予(かね)てから疑問を抱いていた。この度90年の生涯を終えられた氏への私なりの「弔(とむら)い」として主著『昭和史』を読み返してみたいと思う。 《城山三郎が小説『落日燃ゆ』で非常に持ち上げたためたいへん立派な人と広田さんは思われているのですが、2・26事件後の新しい体制を整えるという一番大事なところで広田内閣がやったことは全部、とんでもないことばかりです》(半藤一利(はんどう・かずとし)『昭和史』(平凡社)、pp. 169-170) 矢張り言い過ぎであろう。このような言葉遣いをする人の…