小野田寛郎(1974年フィリピンから帰国)や横井庄一(1972年グアムから帰国)などと違って知名度はゼロに近いが、1993年、敗戦から48年も経ってようやく中国から帰国した石田東四郎という元日本兵がいる。 この石田さんにまつわる物語は、実に驚くべきものだ。1912年、秋田県増田町に生まれた石田さんは、1937年、再招集されて中国河南省に渡ったが、終戦直前に行方不明となり、戦死したものと考えられていた。 しかし彼は、銃撃により頭を負傷し、聴覚と記憶を失ったまま生きていた。 1946年秋、石田さんは河南省黒石寨で、ボロボロの衣服をまとい物乞いをしているところを隣村の農民孫邦俊さんに保護された。 貧…