「おもろいやん」二音ずつ下がってくる関西弁(しかも脱力)でつぶやいてしまうような映画。 黒い細身のスーツで現れる歌下手ヤクザ、狂児を演じる綾野剛が、こちらの視線を一瞬のダレも緩みも許さず吸い取ってゆく。綾野は画面上のゆるく自由な自分を、息を殺して厳しく律する。それは精密に間合いを測られており、最終的にはギャグにつながるシーンでも、重要シーンと同じように演技される。狂児の祖父で、ちょっとだけ出る加藤雅也もよい。すこし乱れたすさんだ髪型もリアルで(ヘアメイク風間啓子)で、加藤の芝居を助けている。二人とも細緻な芝居なんだよなー。けど、綾野剛はカラオケの歌い分け、エックスの「紅」の挟み具合の亢進ぶりと…