マルメラードフ一家の貧しい人々の話に決着がつき、ラスコーリニコフにはスヴィドリガイロフとポルフィーリィとの思想闘争が残っている。ソーニャの示唆した改心の可能性も検討しなければならない。(第6部になると、ラスコーリニコフは(ドストエフスキーも)金のことを気にしなくなる。紙幣や硬貨がでてこないし、具体的な金額もかかれなくなる。暮らしのリアリティが失われて、観念のファンタジーを生きるようになっている。) 1.カチェリーナの死から数日たった。ラスコーリニコフには、霧がかかったような、かすんだような完全な無感動無関心が訪れていた。スヴィドリガイロフはマルメラードフ家の子供たちの養育の手配に忙しく、ソーニ…