戦前の船中読書については、「船内で独歩全集を読む大川周明 - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがある。これとは別の事例が、坂野徹・槇蒼健編著『帝国の視角/死角:〈昭和期〉日本の知とメディア』(青弓社、平成22年12月)の菊地暁「智城の事情ーー近代日本仏教と植民地朝鮮人類学ーー」に載っていた。秋葉隆が大正15年京城帝国大学に赴任するため関釜連絡船に乗っていてたまたま手に取った今村鞆『朝鮮風俗集』(大正3年)を読み、「私に朝鮮民俗の勉強を始めさせた」きっかけになったという話である。出典は、今村の古希記念に刊行された『朝鮮民俗』第3号(朝鮮民俗学会、昭和15年10月)の秋葉「朝鮮風俗集」である。…