歴史学者が鴨長明の三作品『無名抄』『方丈記』『発心集』と残された和歌、そして関連作品・関連資料を綿密に読み込んだうえで提示した信憑性の高い鴨長明の伝記作品。散文三作品が書かれた順番やおおよその時期を確定し、また鴨長明の生年と残されたエピソードが起こった時期とその時の年齢を特定し、さらには後代の人物が鴨長明伝説として仮構し追加したであろうエピソードを分別することで、より真実に近い鴨長明像に迫っている。いくつかある大きな指摘のなかでも、鴨長明が秘曲「啄木」を無断で演奏して問題となったという『文机談』に書かれた「秘曲尽くし」の一件については、関連人物の年齢特定から現実的ではないとして、後代のフィクシ…