源氏 「昨日待ち暮らししを。 なほあひ思ふまじきなめり」 と怨じたまへば、 顔うち赤めてゐたり。 源氏 「いづら」 とのたまふに、しかしかと申すに、 源氏 「言ふかひなのことや。 あさまし」 とて、またも賜へり。 源氏 「あこは知らじな。 その伊予の翁よりは、先に見し人ぞ。 されど、 頼もしげなく頚細しとて、 ふつつかなる後見まうけて、 かく侮りたまふなめり。 さりとも、あこはわが子にてをあれよ。 この頼もし人は、行く先短かりなむ」 とのたまへば、 「さもやありけむ、いみじかりけることかな」 と思へる、 「をかし」と思す。 この子をまつはしたまひて、 内裏にも率て参りなどしたまふ。 わが御匣殿…