非天夜翔 山には木があり 第2章 三国使: 晋長楽三十七年、冬至の日。 晋帝国が力を失い名ばかりの主となり、諸候王が天下を五分してから30年たったこの年、梁国安陽宮で四国会合が開催された。 巳の刻ちょうどに鐘鼓が鳴り響き、梁国軍隊、左丞相の遅延訇(チイェンホン)、右丞相兼上将軍の重聞(ジョンウェン)が文武百官を率いて殿外広場で来賓を迎えた。 「三国特使のおなーーーり!」 重聞は、今日は甲冑ではなく武衣を身につけていた。胸が広く、腰はしっかりと力強い。70歳近くの梁国老臣、左相の遅延訇はかくしゃくとしている。二人は宮殿の外に立って、各国特使一人一人を出迎えた。 「特使の皆さま、ようこそ!」 儀…