アイヌは縄文人の形質的な特徴をよく残し、縄文人の末裔であるともいわれている。そのため狩猟採集の暮らしをおくっていた近世のアイヌ社会は、縄文時代から大きく変わらなかったと考える説もあるそうである。 瀬川拓郎『アイヌ学入門』(講談社現代新書、2015年)においても、アイヌ文化の中に1万年以上前の縄文文化の伝統がうかがえるのは驚くべきことで、現代の民族集団で、そこまで長期の連続性がたどれる例は世界的にみてもめずらしいという。また、アイヌ語と日本語の影響関係もかなり希薄であり、日本の周縁に縄文文化の伝統を残す独自の文化が保たれてきたことは奇跡だという。 それでは、アイヌ文化とはどのようなものか、本質的…