2019年6月12日、男は恵比寿LIQUIDROOMのステージにて一人、ギターを持って弾き語りをしていた。宮本浩次、ロック歌手、そしてエレファントカシマシのボーカリスト。ソロアーティストとして自身初の単独ライブであった。汗でぐしゃぐしゃになった長髪の合間からは、未踏の地を踏みしめていくような興奮と、幾許かの不安の表情が見て取れた。それは、ステージ上の孤高の男に限ったことではなかった。会場の約900人の観客も、宮本と同様の面持ちであり、これまでとは違った新しい"何か"が生まれようとしている瞬間を逃すまいと必死に食らいついていくのだった——。2022年6月12日。あれからちょうど、3年の月日が経っ…