熊野の本地 後編 その後、月日は次々と過ぎゆき、女御の遺骸は雨、露、雪、霜が当たって朽ちてきて、ついに白骨となってしまいました。ですが、女御の左の乳房だけは生前と色も変わらずに乳を出して、王子に飲ませ続けました。こうして王子が成長して、昼間は山の中に出て獣たちに養われ、夜は亡くなった母女御に添い寝をして、いつしか月日が経ち、早くも三年が経ちました。 虎と狼が話し合うことには、「我々がお守りしようとした時ももはやその期限となった。今はもう女御のご遺骸をお隠ししよう」と、して、あちこちに散った骨を採り集めて、岩の間に木の葉で埋め申し、虎と狼は自分のねぐらへと帰り、その後、王子は一人になり、峰に上っ…