美川圭氏の公卿会議―論戦する宮廷貴族たちを読んだ。藤原道長の日常生活で倉本先生が書かれていた平安貴族に対する現代人のイメージはどうやら50年前に土田直志鎮という歴史学の先生の言葉がオリジナルのようだ。摂関政治期には、重大な問題があれば、陣定という会議が開催され、そこでの出席者の意見は定文という記録に残される。陣定で意見が分かれた場合は、多数決をとることはなく、誰はどういう見解だったかということがはっきりわかるように書かれる。その定文が天皇や摂関に奏上され、決裁を仰ぐことになっていた。本書は宮廷貴族の会議の変遷を追った書である。 律令制成立以降 太政官というと、太政大臣をトップとした官僚の組織を…