中世は、都市が勃興し、銭が流通し、交通網が整備され、商品経済が発達し、庶民生活が活況を呈した時代でもあった。その諸相を庶民の生業(なりわい)から窺うことが出来る。これを対象にした貴族社会の歌人達による歌合が伝わっている。七十一番職人歌合(室町後期1500年頃、71組・142職種)、三十二番職人歌合(12~16世紀、16組・32職種)が代表的なものである。もっとも京都中心の世界である為、地方の実態までは分からないが、両者の対比において付随の職人絵図を見ながら庶民生活を想像することは出来る。同じ時期の豊後佐伯地方における生業は如何なる状況であったろうか。 歌合は歌人達が職人に仮託して詠み競ったもの…