童話『ガドルフの百合』を読むと,恋人は両家の近親者達から繰り返し反対されても,賢治について行こうとしていた様子がうかがえる。この童話に記載されている言葉を借りれば,ガドルフ(賢治)は,背の高い「白百合」(恋人)が,雷光を伴う嵐(結婚に対する近親者達の組織だった猛烈な反対行動)で折れても地表に倒れた(身を引く)のではなく,「ケヤキ」の樹幹(自分)に付く「しのぶぐさ(ノキシノブ)」の葉(自分の腕)に横たわる(すがってくる)「百合」(恋人)を見ていた。これは,詩〔古びた水いろの薄明窮のなかに〕の「恋人が雪の夜何べんも/黒いマントをかついで・・・・」という最後の話し合いをするために賢治の居る寄宿舎を訪…