秀吉の勢い 大阪までの随行は、数正の家臣20騎に加え、警護役の井伊直政の30騎のみである。 こうして、於義丸が浜松城を発ったのは、使者滝川雄利が戻ってわずか20日後の12月12日であった。 一行が大阪城に着き、大広間に通されると、秀吉をはじめ、秀吉の弟・羽柴秀長など多くの武将が整然と並んでいた。 秀吉が於義丸を見つけると、 「おう、於義丸じゃな。もそっと近くへ」と親しげに手招きした。 「徳川家康が次男、於義丸でござりまする。羽柴筑前守秀吉さまのご尊顔を拝し‥」 と12歳の於義丸は口ごもりってしまった。 「緊張するのも無理なかろう。しかし、今日からは秀吉の子。強く逞しくならぬといかんぞ。そうだ、…