落ち葉の尾根 頂上へ、その稜線へとつながる尾根は緩やかで、目にも心にも安らぎを与えてくれる空間だった。人の世が奸知と喧噪にまみれているので、鳥や小さな獣たちしか住まないこの緑の世界は、訪れる者を優しい気持ちにしてくれるのかもしれない。人間の原初の喜びを刺激するのだろうか。 いや本当にそうだろうか、と立ち止まって考えてみる。現実は森の中にも不協和が支配しているのではないか。平和や共存などという言葉を連想するのは人間の勝手な幻想であって、実は草も木も生き延びるために必死の営みをしているのではないか、と。それでもう一度、樹々の佇まいを見上げてみる。白い粉を噴いた竹の筒を凝視する。でも、人の目には今あ…