県北山地のサクラスミレ サクラスミレ。人呼んでスミレの女王。私の庭に,春になっても姿を見せてくれませんでした。私が忠誠を誓った漂泊の女王は,誰にも告げずに,遠い世界に旅立ってしまったようです。 水戸でサクラスミレというと,60年前の文献に記録があるだけでした。だから2012年に市内のフィールドでスガれた色の花を見つけた時,それは驚いたものです。サクラスミレらしくない小さな花,それは茨城の低地に取り残されたサクラスミレ共通の形質。人々が去った後に一人残された女王というところでしょうか。それが雑踏の中でひざを抱えてうずくまるように,春の野の植物たちの中にそっと咲いていたのです。 その夏,あろうこと…