子供のころ、「茅葺き屋根の家」なんて言葉を聞くと、 「屋根を拭く?」 と、私はわけがわからなくなった。私は、枯れたカヤの束を手に持って、屋根の上に登り、ゴシゴシと雑巾のように拭くことだと解釈していた。そして、そのあとで、その束のカヤを屋根の上に乗せて、ああいった屋根ができるのだろう、と思っていた。しかし、「なぜ屋根をゴシゴシ拭く作業が必要なのか」という疑問は全く解消されなかった。 母にも、 「屋根をふく、ってなあに?」 と聞いたことがあるけれど、母は人に対して、きちんとした説明を省く傾向がある人だった。 「茅とかかわらで、屋根をふくことよ」 などとしか答えなかった。私はその「ふく」がわからなか…