東国の一地方の局部的戦闘にすぎぬではないか、 いや源氏勢のあいついだ蜂起は無視できぬ、今のうちに芽を刈るにしくはない、 などと一見勝利を伝えた大庭の早馬の注進は、 福原の平家の間にさまざまな波紋を呼んだのであった。 事実、遷都して、しばらくこの些か荒涼とした土地にいるうちに、 平家のものは退屈してきた。 もとより新都建設への情熱などあろうはずがない。 平家のみでなく若き公卿や殿上人たちでさえ、何事か起ればよい、 事変が起れば自分がまず対手となろう、 などと刺激に飢えた心を持て余していたのであった。 こうした他愛のない放言の中にあって、 多くの人は現地の詳報と情勢分析を求めていたが、 丁度大番役…