🌹帝は若宮を慈しむ【源氏物語106 第七帖 紅葉賀8】 新皇子拝見を望むことに対しては、 「なぜそんなにまでおっしゃるのでしょう。 自然にその日が参るのではございませんか」 と答えていたが、 無言で二人が読み合っている心が別にあった。 口で言うべきことではないから、 そのほうのことはまた言葉にしにくかった。 「いつまた私たちは直接にお話ができるのだろう」 と言って泣く源氏が王命婦の目には気の毒でならない。 「いかさまに 昔結べる契りにて この世にかかる 中の隔てぞ わからない、わからない」 とも源氏は言うのである。 命婦は宮の御|煩悶《はんもん》をよく知っていて、 それだけ告げるのが 恋の仲介…