🌷憂きふしを 心ひとつに 数へきて こや君が手を 別るべきをり など、言ひしろひはべりしかど、 まことには変るべきこととも思ひたまへずながら、 日ごろ経るまで消息も遣はさず、 あくがれまかり歩くに、 臨時の祭の調楽に、 夜更けていみじう霙降る夜、 これかれまかりあかるる所にて、 思ひめぐらせば、 なほ家路と思はむ方はまたなかりけり。 内裏わたりの旅寝すさまじかるべく、 気色ばめるあたりはそぞろ寒くや、 と思ひたまへられしかば、 いかが思へると、気色も見がてら、 雪をうち払ひつつ、なま人悪ろく爪喰はるれど、 さりとも今宵日ごろの恨みは解けなむ、 と思うたまへしに、 火ほのかに壁に背け、萎えたる衣…