人はよく誠と云うことを申しますが、本当の誠はそういう口で云う様に、容易に現れるものではありません。本当の誠は一番苦しい時に現れるものであります。 一切を捨てて難儀苦労をする中に、誠が現れるのであって、難儀苦労をすると云うことは、誠を知る為に必要であります。 凡てのものを捨てることは、それ以上の物にありつくことであります。例へばこの手の中に、或一つの物を持っている時に、他の一つのものを掴みたいと思へば、現在持っているものを捨てなければなりません。私等は財産を捨てることによって、もっと大きいものを掴むのであります。世の中のもので、目に見えるものよりも目に見えぬものに尊いものがあるのであります。私等…