鈴虫は出て行った。 松虫と船虫だけとなった。「あ、夕飯まだだったね。」 何を作り食べたか忘れたが、食後船虫に聞いてみた。 「なんで、殴って止めようとはしなかったの?」 すると船虫は、鋭い見解を語った。 「アイツ、相当イカレちまっているよ。狂ったな。」 「あんな奴、いない方がいいじゃん。」 「なんで、あんなヤツ、引き留めんのさ。」 「あんなの、引き留める価値ないじゃんか。」 「アイツ殴ったらよ、アイツ俺の事、傷害罪で訴えやがるぜ。」 「そしたら、俺の人生台無しじゃん。」 【ああ、船虫‼ 】 そうだ。その通りだ。船虫ごめんよ。ごめんよ。 あんたの手を、あんたの人生を汚すところだった。 ごめん。ごめ…